昔は、わからないことがあると、
本棚から辞書を引っ張り出したり、
誰かに聞いたりしていた。
答えにたどり着くまでに、少し時間がかかった。
今は違う。
疑問が浮かんだ瞬間、
もう答えは目の前にある。
検索窓に文字を打ち込む前から、
予測変換が続きを提示してくれる。
「もしかしてこれですか?」と、
機械のほうが先回りしてくる。
調べる前に、もう答えがある。
そんな感覚が、当たり前になった。
便利だと思う。
迷う時間も減るし、
遠回りもしなくて済む。
正解までの距離が、とても短い。
でも、ふと思う。
自分はいつから、
考える前に答えを受け取るようになったのだろう。
本をめくる時間。
関係のないページに寄り道する時間。
友人とああでもないこうでもないと話す時間。
そういう「無駄」と呼ばれるものの中に、
実は面白さがあったのかもしれない。
今は、正確で、早くて、整った答えが並んでいる。
でも、自分の中でゆっくり形になっていく答えは、
少し減った気もする。
調べる前にもう答えがある時代。
それは、安心できる世界だ。
それでも時々、
すぐには検索せず、
しばらく自分の頭の中で転がしてみる。
正解じゃなくてもいい。
時間がかかってもいい。
その遠回りの中に、
自分だけの答えがある気がする。
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