2026年2月24日火曜日

手間が消えていく世界

昔は、何をするにも手間がかかった。
お金を下ろすために銀行へ行き、
切符を買うために窓口に並び、
調べものをするために本を開いた。

今はどうだろう。
指先ひとつで、ほとんどが完了する。
並ばなくていい。
歩かなくていい。
探さなくていい。

手間が消えていく世界。
それは、間違いなく快適だ。
時間は短縮され、
ストレスも減った。

効率は正義のように語られ、
「簡単」「最短」「すぐできる」という言葉が並ぶ。
私たちは、少しずつ軽くなっていった。

でも、ふと立ち止まる。
消えたのは手間だけだろうか。

料理の下ごしらえ。
手紙を書く時間。
誰かを待つあいだの静けさ。

その手間の中に、
気持ちが入り込む余地があったのではないか。

時間がかかるからこそ、
考える。
迷う。
丁寧になる。

手間は面倒だった。
でも、面倒の中に、
小さな物語があった。

今はすぐ終わる。
すぐ答えが出る。
すぐ次に進める。

それは素晴らしいことだ。
だけど、何かを味わう時間まで
一緒に削ってはいないだろうか。

手間が消えていく世界で、
あえて少しだけ時間をかける。
ゆっくり淹れたコーヒーを飲む。
急がずに言葉を書く。

その小さな遠回りが、
自分を取り戻す時間になる気がする。

便利さの中で、
あえて残しておきたい手間もある。
それはきっと、
人間らしさの一部なのだと思う。

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