昔は、待つことが当たり前だった。
電車が来るまでのホーム。
友達からの返事。
現像に出した写真が仕上がるまでの数日間。
すぐには手に入らなかった。
だからこそ、その時間が静かに流れていた。
今は、ほとんど待たなくていい。
メッセージはすぐ届き、
動画も映画も一瞬で再生される。
欲しいものも、翌日には玄関に届く。
便利になったなと思う。
効率もいいし、ストレスも少ない。
時間は確実に短縮されている。
でも、待つ時間があった頃、
心はもう少しゆっくりしていた気がする。
返事を待つあいだ、
相手のことを考えた。
写真を待つあいだ、
どんなふうに写っているか想像した。
待つという行為は、
ただの空白ではなかった。
そこには期待や不安や、
小さな物語があった。
今は、結果がすぐわかる。
早くて、正確で、無駄がない。
けれど、あの「間」はどこへ行ったのだろう。
少し不安で、少し楽しみで、
時間がゆっくり進むあの感覚。
待つ時間があった頃。
それは不便だったかもしれない。
でも、その不便の中で、
心はちゃんと動いていた気がする。
今の時代に、あえて待つ。
返信を急がず、すぐ検索せず、
少しだけ時間を置いてみる。
その静かな「間」の中に、
忘れかけていた何かが、
まだ残っているのかもしれない。
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