2026年2月24日火曜日

スマホが脳の外付けになった日

気づけば、覚えなくなっていた。
電話番号も、道順も、
ちょっとした漢字さえも。

思い出せなくても焦らない。
ポケットに手を伸ばせばいい。
そこに、もう一つの脳があるから。

予定はカレンダーアプリが覚えている。
写真はアルバムが記憶している。
行った場所も、買ったものも、
検索履歴の中に残っている。

スマホが脳の外付けになった日。
それは、たぶん特別な日ではなかった。
少しずつ、自然に、
気づかないうちにそうなっていた。

便利だと思う。
忘れてもいいという安心感。
思い出せなくても、すぐ補える心強さ。

でも、ふと考える。
自分の中に残っているものは、
どれくらいあるのだろう。

昔は、何度も繰り返して覚えた。
間違えながら、身体で覚えた。
忘れないように、必死だった。

今は、保存すればいい。
スクリーンショットを撮ればいい。
リンクを残せばいい。

脳の外に置いた記憶は、
確かで、整理されていて、便利だ。

でも、手触りは少し薄い。
時間をかけて覚えた記憶とは、
どこか質が違う気もする。

スマホが脳の外付けになった日。
それは進化なのか、退化なのか。

たぶん、どちらでもない。
ただ、使い方次第なのだろう。

全部を預けてしまうのではなく、
ときどきは自分の頭で考える。
忘れないように、あえて覚えてみる。

外付けの脳と、
自分の脳。
そのあいだで揺れながら、
今日も画面を開いている。

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