駅の改札は、
昔は駅員さんが、
切符を1つ1つ切っていた。
小さな鋏で、
角を切る。
その音と動作が、
改札を通る合図だった。
朝の混雑でも、
駅員さんは手を止めず、
黙々と切符を切っていた。
今はもう、
その光景を見ることはほとんどない。
改札は自動で、
人は立っていない。
カードをかざして、
通るだけ。
止められることもなく、
声をかけられることもなく、
流れはそのまま前へ進む。
便利になったな、と思う。
それは間違いない。
早いし、
正確で、
考える必要もない。
でも、
あの改札には、
人がいた。
毎日、
同じ場所に立って、
同じ動作を繰り返す人。
言葉は交わさなくても、
そこに人がいるだけで、
駅は少しだけ、
生きている感じがした。
今の駅は静かだ。
音はあっても、
気配は少ない。
私は今日も、
何も確認せず、
何も渡さず、
改札を抜ける。
便利になった世界は、
人の手触りを、
そっと置いていく。
それに気づくのは、
たいてい、
通り過ぎたあとだ。
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